Books:『遺伝子の使命』創元SF文庫
ビジョルドである。デンダリイである。毎度のことで長かったけど今回『遺伝子の使命』は世界が狭くて助かった。
デビュー当時、まとめて売れた三作のひとつで、ま、ちょいとこなれてない部分はあるが、SF活劇好きならとりあえず読んでおくと吉な感じ。
ただ、自分としては作家的にも再読三読まではいかないかなあ。
中抜けを確かめなきゃいけないんだけどな。
と、これで終わってしまいそうなもんだが、ちょいとボーイズラブとかいう話も聞いたので蛇足。
なんというかまあ、長年SF読んでるとおなじみっぽい単性社会が登場するのだが。
参照としてはとりあえず『マージナル』とかね。
「へんなの。ほかの世界では、人間があふれるように生まれていて、しかも必ずしも貧乏になっていないわ」(中略)
「本当に? そんなことがありうるとは思えないけどな。いいかい、子どもを成人にまで育てる労働経費だけでも莫大なものなんだ。あなたの計算には、どこかおかしいところがあるに違いない」
相手は薄目になり、ふいに皮肉な事実に気づいたというような表情を浮かべた。
「ああ、でもほかの世界ではその労働経費は考慮されないのよ。無料ってことになってるわ」
ロイス・マクマスター・ビジョルド『遺伝子の使命』115ページ~
そう、計算されないがゆえのシャドウ・ワークというやつだ。個体そして集団の保存に必要不可欠な労働でありながら社会的金銭的評価からは遠い。というかサービス業として外部化され収益の見込める場合を除いてそのテの評価には縁がないというべきか。
単性社会は性的に均質であるから、一方の性に生まれついた個体が生得的かつ不可避にシャドウワークを負担する、という固定観念も存在しえないのである。
つまり誰でも、自分の身の回りのことは自分でできてあたりまえ。すばらしい(笑)。
むろん性的に均質であることは、同性に対して性的な対象化が行われるわけで、それが耐え難い人はいるだろう。
同性が異性から対象化される状況によっては時として耐え難い自己の体験を鑑みれば、理解は可能だ。ていうか、禁忌が関わるぶん、もっと辛いだろうとは思う。
いっぽうで、同性にごく自然に愛着を抱く、劣情こみ、という幻想を前提にしている特定読者向けジャンルはあるわけで、その商業ベースの一方の極がボーイズラブだとは言える。
そういう意味合いからすれば、本作にも確かにボーイズラブ的な描写はあるのだが。たとえば、主人公はそのテの欲求を抱くのだが、その描写があるのは、それを受け入れられないだろう相手に知られることを恥じる場面なのである。
その成就とか具体的な細部が主目的のお楽しみ小説ではないのである。あたりまえだけど。
ちなみに言うと(バレてるとも言うが)、わたしはそういう幻想を前提に成り立っているジャンルはかなり得意……いや正直、相当に好きなのであるが。
本読みになって、ファンタジーマニアになった後にそのテの波がやってきたので、読むもの見るもの全てを腐女子読みにできるほど徹底してはいない。徹している人と話していると、時々ちゃぶだいひっくり返しそうになることがある。実際にはひっくり返し類似行為を実行に移すことなく、だまって去るだけだ。ふだんも許容可と分かっている人相手にしか話題にはしないのである。念のため。

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