« March 28, 2004 - April 3, 2004 | Main | April 11, 2004 - April 17, 2004 »

2004.04.07

『ここは魔法少年育成センター(3)』

024252120000S.jpg『ここは魔法少年育成センター(3) とびます。』 900円
久美 沙織  EX novels/スクウェア・エニックス
bk1 Amazon 楽天ブックス

思うだけで凡人にはできないことが出来てしまう力をもった子どもが常に一定数生まれてしまう世界を考えてみよう。もちろん魔法力を持つということは、他者より優位に立つことだし、選ばれたものとしてウットリするのはありだと思う。その力でいろいろやって、至難事に解決をもってくる、スカッとするストーリーもね。
ただそこが、「すごいですね」と誉められたら、「わたしひとりの力ではありませんから」とか謙遜してあたりまえな日本社会だったらどうだろう。みんなと同じでない、出る杭は打たれる的社会規範「世間様」が厳しく当たってくるのはまず間違いないと思われる。そしてひとはみな、そこで突っ張りきれるヤツばかりとは言えないのだ。
『ここは魔法少年センター』シリーズでは、異端であることの不安、敷衍すると、突出して排除されることへの恐怖が、主人公の特殊能力を通して語られる。具体的に、まざまざと。いや楽しい学校生活もありなんだけど。久美さん独特のほとばしるような一人称も手伝って、読んでてなかなかコタエるっちゅうか、近来にない読み応えを感じるシリーズだったり。
ぶっちゃけ魔法学校もの、って言うと反射的にまたかよと思うファンタジー読みは多そうだが、とりあえずちょっと待てな感じで。なにしろ久美沙織作品だし、文庫よりやや上を対象にできるノベルズだし、選ばれてあることの恍惚につきまとうはずの不安をカッ飛ばしてしまった(と3巻までしか読んでないと思ってしまう)大当たりシリーズにはない深みがあるのである。ハマるの怖くもあるのだが。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2004.04.06

Books:『神を喰らう狼』

024265840000S.jpgbr>『神を喰らう狼』 580 円
榎田尤利/イラスト:北畠あけ乃
講談社X文庫 White heart/講談社
bk1 Amazon 楽天ブックス

こりゃSFだ。しかもザ・デイ・アフターもの。
混合レーベルだし「榎田尤利」(エダ・ユウリ)で検索すると一目瞭然なボーイズラブ著書多数の作家だしで、てっきりそっち系かと思ってましたが。カバー折り返しの惹句に「ぼくはフェンのために生まれてきた」なんて書かれてるしね。
物語は少年の一人称、隔離された小島の隔離された環境でも、いとしまれ大事に育てられているかれの感情と心理を丹念に追い掛けていくんですが、その名前が「ボーイ」なんですな。ここでピンと来た人、アナタは鋭い。ていうかかなりSF読んでますね。
しかし物語の眼目は、カタストロフィ後に生まれたヒトの多くが絶えざる輸血や人工臓器を必要とする世界で、やがて到達する解決策のひとつの可能性の結果であると、ボーイが気づくところではないのだ(ううむバッチリ書くまいとするとまわりくどくなる)。
かれがそのあと、何を感じ、どう変貌するか、話は序盤のトーンと変わらずに進む。明澄に見えて閉塞感のある心理描写は時に息苦しく、もどかしさまでも感じさせてくれるのは、リアルではありえない存在である「ボーイ」の感情、全面的な帰属感から来る安堵感、そしてそれが虚構と知りつつ求める希求の情が、読者にとってリアルだからだろう、と思う。
ラスト27ページは答えの出ない問題に姿勢を示そうとしたのだろうが、帯の惹句もそこにつながるのだろうが。219ページがラストシーンでもよかったかな、と、ちらりと思った。でも、それじゃあんまりだよな……。
話にそれ気はないのだが、内面重視のボーイズラブちゅうか女子向けのとことん苦手な人には強いてはお勧めしない。そこまででもないと思う人はぜひ、冒頭30ページに耐えて読み進んでほしいとおもう。『イノセンス』とか、いろいろなネタやタイトルが脳内をかけめぐった一冊でした。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Books:『しゃばけ』畠中恵

024258300000S.jpg
『しゃばけ』 540 円
畠中恵  新潮文庫/新潮社
bk1 Amazon 楽天ブックス

ええと2001年日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作、のはずなんだけど、妖怪画を今風にしたようなカバーアートの合う世話物時代小説というべきか。ウェルメイドな読後感が「小説新潮」の読者層にも合ったらしく、つづきもあるよし。
どこがファンタジーノベルか、と言うと、主人公にあやかしが日常的につきまとうあたりなのだが、ここまで略してしまうとネタとしてはありがちに思える。
次々と人にとりつき害をなすのは妖怪と解いてみせる過程のまどろっこしさが世話物として読み込める余裕になってるし、また歴史的江戸と距離をはかりつつ、ファンタジーの読者が共感できる物語を織り込む手際に唸らされました。さすが都筑道夫さんのお弟子さんというべきか。
江戸有数の大店のあるじ夫婦にやっと授かった一粒種の男の子、幼い頃から身体が弱く、聡明なのに仕事のひとつもさせてもらえないモラトリアムな主人公をもってきたところが炯眼というかなんというか。タイトルの娑婆っ気が、かかわる全ての登場人物(あやかし含む)に闇を呼び起こしているのだと気づかせるあたり、車中読書で残り5%で目的地に着いてしまうのが久々にもどかしかった(笑)。

| | Comments (5) | TrackBack (1)

« March 28, 2004 - April 3, 2004 | Main | April 11, 2004 - April 17, 2004 »