『ゲド戦記外伝』
ル=グウィン/清水 真砂子訳
(A5判)/岩波書店 2004年5月
2310円 ISBN:4001155729
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かなり今更ですが価格もありで手をだしかねていたので、読まずに年越すよりはと図書館で。
なんでだか知りませんが本国での発表順と、邦訳の順が逆になっていて、邦訳5巻「アースシーの風」を読んだ時から気に掛かってはいたのですが。
そりゃないよ的気分になりますな、邦訳6巻の外伝を読むと。
作者によるまえがきと、短編が5本、最後にやっぱり作者によるアースシー解説がついたこの短編集には、三部作までの方向性とはちがうもの、世界のチカラを目前にしたヒトの見せる揺らぎや澱み、引き波のようなものが感じられる。
なぜわざわざ4で壊すかとまで読者に言わせた三部作の完成度を思えば、あってはならない要素だし、むしろ本筋の外にあり、切り捨てねばならない枝葉とも言えるだろう。
いやワタシに理解可能なのは自我の物語である探求の1と奪回の2までなので、三部作といっても2までのことしか念頭にないのであるが、それはそれとして。
しかし4まで読み進んだ目には、ゆらぎはけして些末事ではない。邦訳6では、作者の内面から醸成され、アースシー世界のうちにあらわれて豊饒の証左ともなる。その過程を追体験できるようにさえ思うのだ。
だから4のあとに邦訳6の外伝を読めていればなあ、と思うのだ。いやはや。
4→邦訳5じゃ、いくらなんでも唐突ですよ。止むに止まれず壊したあと、いきなり、なんでもありで好きなようにするわ、になっちゃうわけで。今更短編集読んでもなあ、と思っていたのはまあ読み始めるまでの話。
なにしろ邦訳6を読み進むだに、じんわりと、1作目2作目が、なんだか玩具のスノーボールのように思えてくるのだ。いつでもひっくり返せば現れる雪景色のように、読み返せばあの2冊はいつでも不壊のきらめきを見せてくれるだろう。しかし、玩具は玩具だ。
もちろんこの硝子玉のなかの雪景色が唯一無二であった時代に戻してくれろと、ダダをこねる部分がありはするのだが。
というわけで4まで読んでしまった人は借りてでも読めな感じで。
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