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2004.12.15

『アバラット』

『アバラット』クライヴ・バーカー/池 央耿訳
(A5判)/ソニー・マガジンズ 2002年12月
2730円 ISBN:4789719731
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これ読んだのはええと去年の年明けか。まだ2は手を付けてないというか、さすがに1の内容を忘れてるんだけど例によって見つからないので、初読の感想を発掘。

「わが町について興味深いことを10項目」と宿題に言われて調べても、地元のチキン産業のデータしか出てこない、そんなミネソタの田舎町から物語は始まる。 あ、ちなみに本自体は中学生向けですから。
それでも怖い物好きの主人公が掘り返せば、町のホテルに旧館はあるし、塗っても塗っても隠れない染みのある部屋だってある。
ここで怪物が耐え難い日常に暴れ込んでくればいよいよモダンホラーなのだが、どっこい、主人公は「外」を目指す。日常に没頭しきれないことを責められ、町はずれの空に輝く金彩の雲に惹かれて。
異世界ファンタジーの導入としてはありがちかもしれないが、その先の異世界は流石にバーカー、月並みではない。思わぬ援け手すら角ある異形をそなえ、読み進めば真夜中の王は現れて、死者の塵から祈りによって呼び起こした巨蛾の翅には恐怖に声なく叫ぶ人面の斑紋がひらめく。
その影の深さは、訳文にしばしば現れる古雅な響きとあいまって、多島世界に神話的な深みを与えている。ハウリハンやらパナケイアの名に連想が引き起こされるのも、その深みのなせるわざだろう。
子供視点らしく統一されたスタイルを求める向きには破綻と見えるところもあろうが、統一感のもたらす平板さは不要というか、この世界にはそぐわないとも感じられるのだ。
そして巧まざるおかしみに、いつしか世界は親しく感じられるようになる。シカゴの動物園で檻の清掃をしている主人公のおじさん(お気に入りはフタユビナマケモノとか)が「神に笑いの心がないと思うなら、こいつらを見てみい」と言うように。うむ百聞は一見にしかず(笑)。
尽きせぬイマジネーションの広がりが思わせるのは『アルクトゥールスへの旅』なのだが、バーカー自筆の油彩画はメキシコ壁画を思わせる。とはいえワタクシもシケイロスとか、タマヨくらいしか知りませんが。そして怪異は土俗的な形象をそなえ、殺伐とした側面を見せ続ける世界を豊饒ならしめている。
うむ、かなり絶賛ぽくなってしまったが。物語は終わり方が肝心なので、現時点で採点はしがたい。
『ウィーヴワールド 上下』『不滅の愛 上下』を覚えているファンタジー好きなら取り組む価値はあると思う。もちろん血まみれ××まみれが苦手な人は触っちゃいけません(汗。
(20020106 20041215改)

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