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2004.12.02

『ブルータワー』

ブルータワー石田衣良
(四六判)/徳間書店 2004年9月刊
1785円 ISBN:4198619182
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まあ眠れず夜中起きていて読み終わったわけですが。
「人のためにつくそうとするキモチが人間を生かす」って根本理念をお題目でなく語るだけのストーリーテラーではあるとおもう。9.11直後の精神状態を受けて始まった連載であり、事実の説得力を借景にもってくるのも作家としての才能だろう。見てしまったものを語ることで対象化外部化できるのが作家でもあるわけで、そうしなくてはいられない衝動もまた、語りに力を与えている。
あたら有為の若者が指導者の命ずるまま死んでいき、すでにおのれに戦う力のないことを思い知らされる、年かさの男の忸怩たる思いには、おのれの年回りもあり胸を打たれるものがあった。
世界はきわめて単純化されている。テーマを語るためにすべての要素が存在するのは小説の常道というか王道のはずで、世界の状況もなにもかも情報は主人公との会話に集約されており、非常にわかりやすい。この感じは舞台劇むしろテレビドラマか。
しかしまあ、わかりやすい物語の宿命か、いささか絞り込みすぎの観はある。
たとえば世界を救った英雄の予言と一致するという理由で人々が心服してハナシが先に進むのはいかがなものか。予言はナウシカにだって出てきたけれど、彼女が自力で困難を乗り越えてその予言が果たされたところで一致が分かるわけで。だからこそ受け手も納得するのだ。
肝心の人間性のドラマの土台となるべき人間と人間関係の描写も然り。とくに女性の扱いが、なんというか最近流行らない感じ、というのは、とら君のブログでも言及されていたとおり。SF界の大先達にして先般物故された矢野徹氏の『悪夢の戦場』を思い出してしまいましたよ、わたしゃ。ちなみにパピレスなら現役
まあ、これがたとえばの話、田村正和あたりの演技で観られれば、それはそれで楽しめるだろうか。
いやドラマは苦手で、ほとんど観ないんですけどね。偶然家人が「明智小五郎 対 怪人二十面相」(2002 TBS制作)を観ていたもので。
まあ、小説読みには物足りないだろうなあ。ただ、まあ、そういう本のほうが今売れてるのは、間違いなく現実なんだし。

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