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2004.11.11

『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』

すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた〈プラチナ・ファンタジイ〉
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア/浅倉 久志訳
ハヤカワ文庫FT/早川書房 2004年11月
588円 ISBN:4150203733
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帰途、中距離列車で座れないまま『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』を読み通す。
キンタナ・ローにはマヤ族のひとびとが住んでいる。ユカタン半島の東岸、本土からは密林の果てにある岸辺に、波は繰り返し打ち寄せて、あらゆるものを持ち来たり、その深みに運び去る。もっとも、波のひとうちはそれぞれ異なるはずで、この連作集にはキンタナ・ローを舞台とした3本の短編が収録されている。
しかし、一読して思うのは、繰り返しの無限だ。太古から続く悠久に、二百年なにがしの歴史しかない国から来た客は何を思うのか。おおかたの客は心地よい暮らしをそのまま旅先にも持ち込んで、つかの間の楽しみを追い求める観光客なわけだが。それでは見えないもの(あるいは、見ようとしないもの)に魅せられる人もある。たとえば「リリオスの浜に流れついたもの」の青年は、救おうとした美女でも報酬としての富でもない、心から望むものに触れてしまう。それを望んでいたことすら知らぬままに。
著者は波の彼方に悠久と超越を目にしたのか、あるいは願っただけなのか、まあ、それはどちらでもいいことだと、読んだ今では思うのだ。
その名に惹かれる人は、既に虚心にこの本を読むことはできないはずで。ワタクシですら、当事者として体験するのでなく、語り聞かされるカタチをとるのにも、いや排除とか否定というと強すぎるのだが、帰属しない地にある感覚に、仮託されていないかもしれない何かを探してしまうのだが。
そんなことは抜きで、ただ書かれてある異邦の物語として、まずは読むのがよろしいと思われる。(20041111)

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