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2004.11.03

『スカイ・クロラ』『ナ・バ・テア』の子供たち

ひさびさの森博嗣作品。そう、これは子供の話だ。
戦闘機は完璧に整備され、雲の上、天候のない、空だけの世界を飛ぶ。反射運動になるまで知り尽くした操作に楽々と答え、敵機を撃ち落とす。「僕」は撃った弾の行方を見ない。
着陸すればすぐまた飛びたいと思う主人公はいかにも子供じみていて、その自覚を幾度も繰り返し、また自分でも自認する。読者と思われる人々の前の時代の人たちが言うような大人ではとうていありえない、モラトリアムな自己を重ねるにはたやすいだろうと思われるのだが。
作中のかれらはちがう。そうあるように人の手を加えられた存在なのだ。
かれらの姿は見えにくく、世界もまた見えにくい。そのようなキャラクターであり、そのような削ぎ落とした書かれかたであるのだが、削ぎおとしの話は読者によっては、内面から引き起こされる何かがないままに終わってしまうことがあるのは致し方のないことである。
この空のどこかに、何にも満たされず、すがる先を求めても見いだせない、やるせない詩情を覚えるひともいるのだろう。
今度の休み、ひと気のない海で、ひとり煙草をふかすのもいいかもしんない、と思える人にはヒットするかも。
あと、まあ、なにぶんメフィスト賞デビューの作家のひとりなので、そういうの今まで未経験の人はいきなりこれ読まないほうがいいと思う。
いやはや、晩秋の海風に吹かれるにも、わたしは年を取りすぎてしまったなあ、と思うのであった。

skycrawler
『スカイ・クロラ』
森博嗣
中公文庫/中央公論新社 2004年10月
620円 ISBN:4-12-204428-6
bk1 Amazon 楽天ブックス

『ナ・バ・テア None But Air』
森博嗣
C★NOVELS BIBLIOTHEQUE/中央公論新社 2004年10月
1050円 ISBN:4-12-500871-X
bk1 Amazon 楽天ブックス

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