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2004.10.10

『不安な童話』

『不安な童話』不安な童話恩田陸
祥伝社文庫/祥伝社 1999年4月刊
580円 ISBN:4396326777
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25年前にはカルト的な人気を誇っていたという、名も知らない女流画家の回顧展に行ったとき、主人公に幻視が訪れる。鋭いハサミに首の血管が破られて、死が、訪れる。
主催者こと画家の息子は問いかける。「生まれ変わりを信じますか?」

なんだかなあ、ひどく短く感じられた。ひとつには、相当かいつまんであるところがあるからだろう。主人公がなぜ今のような境遇に居るのか、特異な能力ゆえにけっこう辛い目にはあっているのだが、経緯は単に語られるだけだ。
いや主人公という呼び方がこんなに似合わないのも珍しい。むしろその、珍しいが希有ではない能力に振り回され、ただ流されていく客体のようで、能力ゆえの困難にあたって自分で何をするでもなく、ただ風から庇われているように思えるのだ。
故知れない能力ゆえにふりかかる恐怖は生々しく、オカルティックなホラーとしてはまあイケるだろう。ただ、そう読むにはラストが自分的には今ひとつな感じだ。
そして主人公は職を失うほどのいきさつがあったというのに、なぜこうまで主体としての自分に無自覚なままなのか。主人公には姉がいて、私的なレベルでは主人公を実社会の風から庇っている感じなのだが。なんというのか、一面的に感じられるのだ。ひとりの女性しかいなくて、姉妹の役割が、その性格的に異なる面だというのなら、まだ納得できるのだが。作劇上ひとりにすると話が動かせなくなるから二人なのだとすると、主人公はいかにもそのために作られたかように思えて残念だ。
つまりまあ、話としては未消化な印象をうけてしまう。もっと何かあっても、とね。これはたしか3作目のはずなので、若書きと言ってしまえばそれまでだが。
ちなみに『光の帝国』『象と耳鳴り』『月の裏側』は割と気に入ってます。ああいうのが、また読みたいので、作家名チェックは続けると思います。

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