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2004.10.06

『象られた力』の律動感

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飛浩隆
ハヤカワ文庫JA/早川書房 2004年9月
777円 ISBN:4150307687
bk1 Amazon 楽天ブックス

最初に白状しておくと、わたしは『グラン・ヴァカンス』を読み通せなかったのである。短編なら何とかなるかと取りかかってみたのが本書なのである。「デュオ」はたしかSFマガジンで読めた記憶があったしね。
で、その「デュオ」をフムフムと読み終わり、「呪界のほとり」にニヤニヤ、3作目「夜と泥の」がツボに嵌った。いや、つい音読したくなる律動感に、とりこまれる感じがして。
主人公が呼ばれてはるばるとやってきた辺境惑星の沼地、対立する惑星改造マシンの群れがお互いに、それぞれナノマシンの影響下にあるらしい生物たちを味方に付け、惜しみなく戦う蕩尽の一夜に。
その実景と、そこまでの道筋をカットバックで挟み込むなかで、主人公を呼び寄せた作中人物は、人類の拡散と希釈、おそらく内向を案じてみせる。ここに解決策があるのかと、思わず期待するのだが……スカッと外されました。いや短編小説の常道っていうか、外しつつ納得させてこそ短編なんだけども。
やや身構えてタイトルストーリーにとりかかる。既に無い星《百合洋》の、謎に満ちた象徴の体系が人々を虜にするさまは、なんと魅力的であることか。そして、惑溺したい心持ちを異化し対象化し外部化していくテクニックの巧みなこと、背筋がぞくりと粟立ちそうな。
しかしまあ、だからこそ『グラン・ヴァカンス』はダメだったのかもしれないと、今にして思い至るのだが。
とりあえず書庫を探して、再チャレンジしてみますかね。構造が見えれば、離した対象として読むこともできると思うし。

妙にこだわるのは「夜と泥の」導入部で『大地への下降』(ロバート・シルヴァーバーグ/中村 保男訳 サンリオSF文庫。言うまでもなく絶版)を思い出したから、というのは、これも自分の好みというよりないのだが。と書くこと自体未練がましいよなあ。うむ。音読はもちろんしましたとも。

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この方の作品は、昔SFマガジンで読んだ気がするのだけど記憶にないし、変わった名前の著者さんの作品を敬遠するところもあって、読んでおりませんでした。今回、bk1で... [Read More]

Tracked on 2004.10.21 at 12:43 AM

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