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2004.10.26

『オットーと魔術師』

『オットーと魔術師』
山尾 悠子
集英社文庫 コバルト・シリーズ/集英社 1980年8月(版元品切重版未定)
273円 ISBN:4086103672
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帰り道、1日持ち歩いていた『オットーと魔術師』を読了。家にあった本で、あるから安心してたのか、今まで未読でした。
黒猫を魔術師のところに連れて行くタイトルストーリーはほんの12ページばかり。ほかに収録は「チョコレート人形」「堕天使」と、おそらくコバルト以前の、小説ジュニアに掲載されたハナシであろう。なるほど感じ出てるな、と思いました。
そして、この短編集の半ば以上を占めるのは「初夏ものがたり」という連作だ。
共通して登場するタキと名乗る日本人男性は常にダークスーツを身に纏い、一分の隙もなく身だしなみを整えている。五月雨の午後にもズボンに座り皺ひとつついていないのは、この世の存在ではないからなのだ。この世とあの世、曖昧だが確固たる境目を越えるビジネスに、向こう側のエージェントとしてかれは関わっていた。
といっても深きより何者かが攻めてくるとか、そんな話ではなくて、もっと個人的な、叙情的な話なのであるが。強い思いは現れても、それが増幅され温度が上がることはなく、結末は翳りの兆す夕刻の風のように、ひやりと冷たい。
あっさりとした短編で、まあ、読後感は悪くない。無機質と闇の加わった後年の短編こそワタクシの好むところであるのだが。まあ、こういうのもいいかな。

余談。古本屋リサイクル本屋回りは半ばそれ自体趣味になってるけど、この本はいちども見たことがない。あるところにはあって、たとえばアマゾンのマーケットプレイスに出てはいたが、四千円ちかかった。全部押さえておきたい山尾ファンなら、これでも手が伸びるんだろうなあ。
しかし若者よ、『山尾悠子作品集成』とか『ラピスラズリ』、翻訳の『白い果実』とか、どれか一冊でもまだなら、新刊で買えるうちに買うべし。それが新刊につながるのだから。

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Comments

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