2004.10.31
2004.10.30
2004.10.27
カテゴリを再整理してみたり
読みかけ本については『1688年バロックの世界史像』 みたく中味書き加えだけ、読み終えて感想書いた本は再度新規書き込みして、買い本記録を消すことにしよう。
この配置を直すにはHTMLをいじればいいんだろうけど、今はここまで。
買い本帖は……楽天のポイントサービス狙いで拾遺な感じでした。
下見帖は先週末ぶんチェック先回しで制作中ですだ。隙間はあとから埋めるかも。
『夢見る猫は、宇宙に眠る』
八杉将司
(四六判)/徳間書店 2004年7月
1995円 ISBN:4-19-861880-1
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第5回日本SF新人賞受賞のデビュー作。
うーん、これたぶん例えばハヤカワJAとかで700円前後なら、新人賞チェックでなくても買ってたかも。
いや、まあ、書影は帯がないので真っ赤なだけですが、この新人賞絡みの本はみんなイラストの入った太い帯がつくんですな。そこに「火星は突如として翠の星へと変貌した」とあるように、ナノテク実用化後でテラフォーミング可能なくらい遠い未来の話なんだけど。
主人公の隔絶感がなんというか、リアル……というのもヘンか、実感があるのである。誰かと話していても、その人と話している自分、ふたりを外側から眺めているような。そんな感覚。
就職して働いていて、なんというか会社側が必要と判断した社員を心理カウンセラーのところに連れて行く、という、ストレス溜まりそうな仕事を四年間も続けているのだが、ストレスの源としてはっきり描かれるのは親との関係で。
その仕事先の病院で、ユンと名乗る女の子に出会うんだけども、いきなり「ワタシ、きれい?」とか聞かれたら、こりゃ相談しに来てるほうかな、と思うよな、ふつう。
しかしユンはそうじゃなくて、他者と独自に関わりたがる癖があるだけの、実習生だったのだ。
彼女に関わられることで、主人公は自ら断ち切ろうとしていた人間との関係を再び開かれるのかな、と思うんだけど、これじゃいつまでも火星の話にはならないわけで。
いや期待は裏切られ後半そういう話になるんだけど、前半トゥインの描かれかたとか、けっこういいなと思っただけに、いっそ別々ならと思ったりもした。
ちなみにラストにはちょっとガッカリ。火星のこととか、かなりな有為転変があるだけに、内的にもなんかあってほしかったなあ、というのが本音でありました。だからリアルでいいのだと言う友人もいるので、まあこのへんはお好みしだいかと。(20041103)
2004.10.26
新潟県中越地震:義援金及び支援物資について
秋田で市の職員を騙った義援金詐欺が起きかかったという。→朝日新聞社会面
都内で〈震災おれおれ詐欺〉も出たそうだ。→読売新聞社会面
ご家族親類が被害に遭われたかた、心中お察しします。ただ、どうか冷静に。
しかし余裕はないがせめて何がしかと思っている人は多いと思えるだけに、悪戯にしても腹が立つ。
募金するほうも、馴れないことだからどこ調べたらいいか分からないかもだけど。大事なお金だし、自分で確かめて信用できるところに預けたいもんだ。
たとえば@niftyでは@payでカード決済の募金をネットで受け付けている。ささやかですがさっき募金してきたさ。
カード使えなくてはねられた人には、くりおね あくえりあむさんの「義援金及び支援物資について」で金融機関など受付先を整理してくれているので、参考にしてほしい。
時間と体力に余裕のある人はどうかボランティアに。まず家の近くでOKですからボランティア登録してね。
朝日新聞だと社会面(最終ページのテレビ欄から開いたところ)に各ボランティア団体の連絡先を載っけてるし。
何をどうしたらいいかわからない時は、阪神淡路大震災当時、何も知らないままボランティアに駆けつけた経験のあるまうんとくっく日誌管理人さんが経験談も含めて、「平成16年新潟県中越地震を考える」に分かりやすく書いてくれています。
ニッポンに住んでる以上、じぶんは大丈夫とか言えないんだよなあ、と、だんだん不安になるしするけど。
今できることをするしかないんだな。崩れた本をかたづけて、保存してる水を替えておこう。
『オットーと魔術師』
『オットーと魔術師』
山尾 悠子
集英社文庫 コバルト・シリーズ/集英社 1980年8月(版元品切重版未定)
273円 ISBN:4086103672
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帰り道、1日持ち歩いていた『オットーと魔術師』を読了。家にあった本で、あるから安心してたのか、今まで未読でした。
黒猫を魔術師のところに連れて行くタイトルストーリーはほんの12ページばかり。ほかに収録は「チョコレート人形」「堕天使」と、おそらくコバルト以前の、小説ジュニアに掲載されたハナシであろう。なるほど感じ出てるな、と思いました。
そして、この短編集の半ば以上を占めるのは「初夏ものがたり」という連作だ。
共通して登場するタキと名乗る日本人男性は常にダークスーツを身に纏い、一分の隙もなく身だしなみを整えている。五月雨の午後にもズボンに座り皺ひとつついていないのは、この世の存在ではないからなのだ。この世とあの世、曖昧だが確固たる境目を越えるビジネスに、向こう側のエージェントとしてかれは関わっていた。
といっても深きより何者かが攻めてくるとか、そんな話ではなくて、もっと個人的な、叙情的な話なのであるが。強い思いは現れても、それが増幅され温度が上がることはなく、結末は翳りの兆す夕刻の風のように、ひやりと冷たい。
あっさりとした短編で、まあ、読後感は悪くない。無機質と闇の加わった後年の短編こそワタクシの好むところであるのだが。まあ、こういうのもいいかな。
2004.10.25
2004.10.24
『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』
アポストロス・ドキアディス/酒井 武志訳
(四六判)/早川書房 2001年3月
1890円 ISBN:4-15-208336-0
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文庫を少しは片付けるかと入ったはずの書庫で手にとってしまったこの本が面白く、読了してしまう。
「ゴールドバッハの予想」とはご存じのかたも多いだろう、数学上の難問と言われる命題のひとつである。いやワタクシ知りませんでした(汗。
なんというのか、こう、ひどくヒロイックな話として読めるのだ。一族のなかで困りもの扱いされている伯父さんが、実は数学者で。甥である主人公の少年は、伯父の秘密に近づこうとして数学に魅せられる。
言分けて説明しなくてはならなくなったとき、実業家の父(3兄弟の次男で、ごく実際的な男性である)は「兄は「ゴールドバッハの予想」で人生を誤った」と吐き捨てるように言うのであった。
いや、まあ、ドラゴンとか囚われの姫君はいないけど、希有な人物が困難に挑む探求の物語として、その懊悩、風変わりっぷりも含めて実に魅力的に描かれている。
数学に通じた人ならもっと深い楽しみかたが出来るんだろうけど。もう学校の数学は忘れたけど数学用語にアレルギーはないかな、という人なら、面白さは感じられると思うのだが。
2004.10.22
『ぬっとあったものと、ぬっとあるもの 近代ニッポンの遺跡』
鎌田東二ほか
(A5判)/ポーラ文化研究所 1998年10月
1575円 ISBN:4938547392
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カバーの大船大仏に記憶を刺激される人もいるでしょう(汗。ひとの住む町にスケール感の異なるサイズでそびえ立つ高い建造物を扱った本。大仏や回転展望台(レストラン含む)、太陽の塔とか東京タワーにゴジラまで。
写真たくさんで、どことなく可笑しみのあるところは『新 正体不明』を思わせるんだけど。ついてるのが路上観察学会的な、思わずクスっと来てしまうひねったキャプションじゃないんですな。
それぞれに美術史的、あるいは建築史的、はたまた民俗学的にアプローチする専門家の解説なので、ちょっと手こずりました。調査はさすがに行き届いて、それぞれの来歴には読みふけってしまうのですが。
トマソン的興味しか感じないのはやはり実物ほとんど見たことないせいもあるだろうが。ゴジラも埋没するビル街に馴れちゃってると、むしろスケール感のほうが変化していると言えるのかも。
ええとポーラ研究所が出していた「is」(~2002年9月刊第88号)の別冊と聞けば、なるほどと思う内容なのかも。ちなみに図書館の本でした。
2004.10.19
下見帖更新
すごいデカい台風が来ているらしく、頭痛に悩まされつつ下見帖更新。といっても10日まで。
そんで『物語消滅論』読了で、考えたことを書いてみる……いや物語の消費って個人的な営為だから。イデオロギーの大局につながりませんでした。うぬ、修行が足りませんな自分。
あいかわらず絞りきれない↓チェックリスト。
〈マジカル・シティ・ナイト〉
朝松健 スーパークエスト文庫/小学館
1部(5冊)、2部(2冊)刊
備考:文庫廃止のため入手困難。古書のみ。
マジカル・シティとは、コチラ側が向こう側と呼ばれるような、魔法によってなりたつ世界に属する都市である。市警本部長はネクロマンサー、部下の〈騎士(ナイト)〉が主人公なのだった。
買い始めるのが遅くて奇数巻しか持っていなかったのだが、無事中抜けが埋まったので読んでみた。
主人公はハードボイルドぶってはみるがツマづきの多い青年なのだが。
やるときゃ、やるのである。いや、なかなか。
2004.10.18
建築探偵の話になり。
正確には出かけたときの茶飲み話(笑)を思い出していたら〈建築探偵〉シリーズあるよ、という話になったのを思い出して、積み上げた山とか本棚部屋をざっと見たら、最終巻まで買っていたのを発見しました<今頃。
番外編は目に入ってなかったのと、講談社のサイトで説明見たら覚えがあるけど見つからないのと、タイトルすら記憶にないのと(汗、中抜けはありました。
『未明の家』が好きで、気に掛かっていたシリーズだけに。
本編の明確な中抜け『仮面の島』を探したくなるのが人情というものである(汗。しかしまあ、まず図書館だ自分。
〈建築探偵桜井京介の事件簿〉発掘おぼえがき。
〈建築探偵桜井京介の事件簿〉 11+外伝3
篠田真由美 講談社ノベルズ/講談社
備考:『美貌の帳』までは講談社文庫化(2004年9月)。
パラ見たところ追い掛けで買った巻には5刷に至るもあり、シリーズ作品は版元サイトでもほぼ品切れ無し。
探偵からして自明であるが(笑、リサイクル書店にはほとんど出回らないところも女性に人気のシリーズの特徴である。
2004.10.16
ひたすら買い本帖をつけていると。
もう今月ぶんは買ってしまったのがよく分かる(汗。
先日、友人に誘われて、丸の内オアゾの丸善・丸の内本店に行ったけど。
あの棚の高さはいただけないとよく言われてますが、確かに見づらいですね。閉塞感はあるし。しかしあれだけ量があると、あれもあるこれもあるになるのはかなり嬉しいんだな。
いや、なにも買わずに帰るのが辛かったこと。そこをドゥバイヨルのカフェのアイスクリームで何とかしのいだのはひみつ(笑)。おいしかったですよ。
それにまあ、主目的はギャラリーの「羊皮紙に描かれた中世」でしたから。ガラスケースにほとんどかぶりつき、隅から隅まで『リンディスファーン聖書』『バンベルク黙示録』(どちらもファクシミリ復刻)を見ました。至福。
いやはや、サイトの画像ファイルをとにかく減らしたので更新はできるようになったけど、チェックした本を検索したいんだよう、という欲求は満たされないままだったり。
途方にくれていても、本は出るんだなあ。
『へんないきもの』(20041013)
早川 いくを
(四六判)/バジリコ 2004年8月
1575円 ISBN:4901784501
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わたしの好きな『鼻行類』や『平行植物』とは違って実在の、しかし十分信じがたい生き物を扱っている本。おしむらくは挿し絵がカラーでないことか。いやフルカラーにしたら価格もしかして倍ですけどね。(20041016)
うむう持ち歩きつつ読了。水棲腔腸動物や軟体動物、陸水問わずの昆虫が多かった。
ダイビングをする人なのでは、とは思ったが、考えてみれば恒温で内骨格の哺乳類では、薄っぺらかったり極端に手足長かったりするにはムリがある。形の自由度に制約が大きいわけで、信じがたいカタチというと種にかたよりが出るのはあたりまえかもだ。トリビア的に素直に読んでヨシな感じで。
2004.10.15
買い本帖をつけながら。
やっぱり本は買ってしまうもので(汗、読んだり感想書いたりの日々なのだが。
新刊下見帖を作りつづけて(中断期間抜きでも)半年以上になるのにデータサイズの見直しをしていなかったのだが。
いままで不具合があったらしく、つい先日になって「容量を超えています」と連絡が来た。いや困った。
しかし何とかデータを整理せにゃならぬ、ということで、下見帖は1回休むかも。
『1688年バロックの世界史像』(20041012)
ジョン・E.ウィルズ・Jr/別宮貞徳訳
(四六判)/原書房 2004年9月
2940円 ISBN:4562037903
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ぼつぼつ読み進み中。世界史を1688年という時間軸で横断する試みなのだが、その一年に起こったことを記すにとどまらず、そのような状況にどのように至ったかを解説してある。
いや訳すも大変な労力だったと思われる。まして原著者においておや。
さて、導入部はメキシコだ。ヒエロニムス修道会の修道女でありながら文名を恣にしたクレオールの女性の話から、はじまっている。なぜそのような、スペイン本土さながらの文筆家が当時の植民地に生まれたか、その土壌としての支配階級の実態や、銀山からの収奪の実相が解き明かされる。うむ、圧巻。(20041027)
2004.10.13
『運命は剣を差し出す 2 バンダル・アード=ケナード』
駒崎優
C・novels fantasia/中央公論新社 2004年7月
945円 ISBN:4125008612
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バンダル・アード・ケナードとは、軍服があるけれど銃砲の出てこない異世界の傭兵部隊の名前なわけで。そう、軍隊としてはドイツ農民戦争とか、そんな時代の感じ。
1巻はその隊長が負傷してて、置いて進軍せざるを得なかった部隊と再会するまでの話、なんだけど。
2巻では時を遡り、傭兵隊のそれまでが語られる。若くして先代に後事を託された隊長だけに、主人公ジア・シャリースは腕利きというばかりじゃなく人情味もありで、どこか日常的平穏の明るさを匂わせながら物語は快調に進む。戦争だから惨い話あり仲間の死という事態もありなのだが。
もちろん新人も来る。カバーアートに独りアップの色浅黒い青年は、最初、名乗る名前を持たなかった。ジア・シャリースは彼にマドゥ・アリ、狼という名を与え、東の出身の若者は徐々に仲間になっていくのだが。
青年の顔の左半面を覆う刺青と、黒い軍服の肩に白い縫い取り?の模様の関連が明らかになっていく過程には、作品世界をリアル歴史の延長と考えると違和感があるかもしれない。
しかし読むのは現代に生きる私たちであるわけで。その現代的感性が感じる違和感を主人公に負わせ、決断を導き出すまでの過程は、訴えかけてくるものがある。
架空性の高い話でしか、できないわざであるわけで。
とにかく続きが楽しみです。
2004.10.12
『スター・ハンドラー (上)』
草上仁
ソノラマ文庫 937/朝日ソノラマ 2001年7月刊
520円 ISBN:4257769378
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友人のボードで『スター・ダックス』つながりの話題になり、書棚を探したらやっぱり買ってたので、とりあえず読了。ううむこれは……職人気質でチームワークを忘れない大人のキャラを配して、ひたすら構築、いっぱい書き込む『スター・ダックス』とはベクトル的に反対だとおもわれる。
いや面白いんだけど。独白男の喋りがキタカタ節に重なっていけませぬ(笑。
しかしわたしは下巻を買ったのか?<書棚にはみあたらない……
『デス・タイガー・ライジング 1 別離の惑星』
荻野目 悠樹
ハヤカワ文庫JA/早川書房 2003年5月刊
735円 ISBN:4150307229
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舞台は二重太陽の星系、遠い未来社会。親同士の都合で見合いさせられたミレとキバはいつしか惹かれ合うようになるのだが。やがて来る大天災、千年に一度の〈夏〉を生き延びるため、政府は他星への侵略に踏み切り、思い合うふたりも会うことすらできないまま、世界は惑星間戦争に突入するのであった……と、これきり会えないでは大河ロマンスにならないので、再会はするんだけれど。
過酷な体験をしたりで彼も彼女も変わっていくわけですな。いや、このへん、どう書いてもネタ割りそうなので、とっとと続きを探すとします。
2004.10.11
2004.10.10
2004.10.09
創元11月のフェア
東京創元社のメールマガジンが来ていた。更新部分を含めいろいろ見てみる。
月末刊のイーガン『万物理論』の訳者あとがきが一部公開されている。待ち遠しい感じ。
11月に[翻訳者・書店員が薦める1冊フェア]があるという。
SF部分は↓な感じ。中に1冊だけ、フェアをきっかけに重版される本があるのである。
ま、タイトル見ればすぐ分かるっていうか(笑。
2004.10.07
2004.10.06
『象られた力』の律動感
飛浩隆
ハヤカワ文庫JA/早川書房 2004年9月
777円 ISBN:4150307687
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最初に白状しておくと、わたしは『グラン・ヴァカンス』を読み通せなかったのである。短編なら何とかなるかと取りかかってみたのが本書なのである。「デュオ」はたしかSFマガジンで読めた記憶があったしね。
で、その「デュオ」をフムフムと読み終わり、「呪界のほとり」にニヤニヤ、3作目「夜と泥の」がツボに嵌った。いや、つい音読したくなる律動感に、とりこまれる感じがして。
主人公が呼ばれてはるばるとやってきた辺境惑星の沼地、対立する惑星改造マシンの群れがお互いに、それぞれナノマシンの影響下にあるらしい生物たちを味方に付け、惜しみなく戦う蕩尽の一夜に。
その実景と、そこまでの道筋をカットバックで挟み込むなかで、主人公を呼び寄せた作中人物は、人類の拡散と希釈、おそらく内向を案じてみせる。ここに解決策があるのかと、思わず期待するのだが……スカッと外されました。いや短編小説の常道っていうか、外しつつ納得させてこそ短編なんだけども。
やや身構えてタイトルストーリーにとりかかる。既に無い星《百合洋》の、謎に満ちた象徴の体系が人々を虜にするさまは、なんと魅力的であることか。そして、惑溺したい心持ちを異化し対象化し外部化していくテクニックの巧みなこと、背筋がぞくりと粟立ちそうな。
しかしまあ、だからこそ『グラン・ヴァカンス』はダメだったのかもしれないと、今にして思い至るのだが。
とりあえず書庫を探して、再チャレンジしてみますかね。構造が見えれば、離した対象として読むこともできると思うし。
2004.10.05
『畸形の神 あるいは魔術的跛者 』
種村 季弘
(B6)/青土社
2200円 ISBN:4791761073
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この大先達が8月末に薨じられた(と書いてしまうのを見逃してほしい)のは、幻想文学を知る人には記憶に新しいところだろう。おそらく生前さいごの本と思われる。
入院中も続いたユリイカの連載を退院後大幅加筆訂正されたもので、古今東西の神話伝承美術詩歌文学を縦横無尽に渉猟しながら、異能ゆえに課せられた跛行という異形、いや異類イメージを追い掛けるエッセイである。
博覧強記は言うまでもないことながら、このイメージの豊饒はどうだろう。そして古代の放胆に自在に追随しながら、現代も残る偏見の桎梏からは自由なのだ。
酌めども尽きぬ美酒を味わいつつも、その作り手がすでに失われているのを噛みしめる。
読み終わるのがなんとも口惜しかった。
碩学の魂よ、どうぞ安らかに。
ユニセフのギフトカタログが来た。
今年もユニセフのカタログが来た。オリジナルデザインのカードや年賀状用のはがきなどは、以前ニュースステーションなどで何度かとりあげられたのでご存じのかたも多いだろう。カタログからなにか買うと、収益の半分がユニセフに募金される。
サイトもある。直接注文もできます。
はがきだけでなく、メモパッドなど文具類からポロシャツTシャツ、リュックにバッグ、現地の授産事業?で作られたエスニックグッズまで、いろいろある。一番高いのはやっぱりパシュミナかのう。ジュートバッグなんかは値段も手頃で、普段使いにいいかもしんない。
玩具もある。毎年出るオリジナルのテディベア(今年のはシロクマちゃんだ)とか、幼児向けの知育玩具とか。
日本の通販カタログには載ってないようなのもある。
たとえば、「エジプトふしぎ発見」。いや幼児向けの知育玩具で、ピラミッドのぬいぐるみ、じゃなくて、角からジッパーを開くと、スフィンクスやミイラ(包んで装飾の面がついてる形です、念のため)なんかの人形が出てきて。ピラミッドを完全に展開するとエジプトの地図になるという。……さ、さわってみたい。<かなり変な人。しかし5700円はなあ。ちょっとなあ。悩むなあ。
2004.10.03
『Edge 4 檻のない虜囚』
とみなが貴和/緋乃鹿六
講談社X文庫White heart/講談社
630円 ISBN:4062557428
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このシリーズ、久々と思っていたら三年ぶりの新刊だった。主人公がプロファイラーだけに心理サスペンスとでも言うべき作品なのだが、相棒の特殊能力もありで、ハナシとしてはややSFに寄ってる感じは変わらず。
しかし4巻の事件はニュータウンでの犬殺しなのだ。臨海地に開発され住宅ばかりが続く街の閉塞感を体現するような少年の情動を追い掛けていく筆は、この三年の思いを詰め込んだように丹念であり、また共感に満ちて、ラストのカタルシスがすばらしい。こんなにうまく行けばと溜息混じりの感慨も呼び起こしはするのだが。
ひとことでまとめれば「親(がわり)だって人間だ。完璧ではない」って話なんだな。
2004.10.02
『不良の木』――野崎シリーズ
『雨は心だけ濡らす』(感想あり)、『風の中の女』つながりで読み始めた私立探偵野崎のシリーズ。
この野崎の事務所は何故か「人間研究所」なのだ。俺は探偵じゃない、人間を研究しているのだと言うのだが。
なんというか、このシリーズは最初、一心太助かい、と思っていた。
野崎の伯父は関西経済界の巨頭だし、小説に描かれるのは事務所に持ち込まれる普通の仕事、たとえば離婚調査なんかではなく、伯父の名で頼まれる大事なので、必然的に伯父の影がちらつくのである。
しかし物語はその伝家の宝刀のカタルシスではなく、持てる階層の、伯父の年代――ふつうの勤め人なら既に定年退職している年頃、ありていに言えば老人――の男たちが、失ったものをとりかえそうと、また、失えないものを失うまいと懸命にあがくさまを、描き出して見事だ。
人が年を取るのは、何かを繰り返し失っていくことだ。言った誰かは忘れてしまったけど、まだ覚えている。
いや、こんなこと考えるのは、喪失感に感情移入できる年齢になってしまったのだと、それだけのことかもしれないけど。
リユース文庫サイトで。
ううむ、友人とボードで朝松健作品の話になり、思わず〈魔術戦士〉が読みたくなる。背後の書棚に7だけあるのはどういうことか自分(汗。本の山を全部掘り返さないと、どれは買って何は買ってないか最終的には確認できないのだが、ついリサイクル書店サイトを回ってしまう。
知りませんでした、リユース文庫専門と銘打った文庫OFFができていたとは。
使い勝手を試さなくてはと買い物してみたのが1日付けの買い本帖です(汗。
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