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2004.09.10

『夜更けのエントロピー』

書影『夜更けのエントロピー』
『夜更けのエントロピー』 1995円
ダン・シモンズ/嶋田 洋一訳
  奇想コレクション/河出書房新社(四六判ソフトカバー)
bk1 Amazon 楽天ブックス

今更感ありですが、ふと手に取ってやめられず読み進む。作家としては訳者あとがきにもあるように、結末で「こう来るかあ!」(握り拳時には本叩き付けをガマン)なタイプの作家なのだが。
信じられない保険請求の事例を集めたオレンジ・ファイルの挿話に惑わされながら表題作を読み進んだあげく、夏のゲレンデで人生の虚無の風にしみじみと吹かれちゃったりするわけで。
分かっちゃいなかったんだな自分、と思わされるのにも、爽快感の伴うことはあるものだ。
ホラー作家イメージのシモンズ作品としてはやはり「黄泉の川が逆流する」「最後のクラス写真」だろうか。
ただ秀逸なのは「ケリー・ダールを探して」だとワタシも思う。ハナシとして筋を語るとありきたりなのに。どうしてこう、ひきこまれるのか。

個人的には話の結末にたどり着く前に、切り取られている現実のありようが頭から離れなくなることもあるもので。
先週末あたりから、チェチェンのニュースの流れる居間で読む「ドラキュラの子供たち」の空恐ろしさよ(死者に光明と平安を。そして生者にも)。展開につれて思い出すのは、偶然深夜のテレビで見てしまった独裁者夫妻最後の映像なのだ。彼女は両腕をとられ連れていかれながらまだ叫んでいた。「わたしはあなたがたの母だ」と。画面は暗転し銃声は響き、何も映していない目がうつろに開く老いた男の顔が映る。その墓には墓標もない。奪われ神聖化されないために。ただ青草が繁っているだけなのだそうだ。まあちょっとラストの衝撃が薄れたりするのだが。ひろがるイメージは、作品に描かれる闇を深いものに感じさせる。これもまた、作品を忘れがたくするものなのだ。

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