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2004.08.26

キング・アーサーやっと観た。

水曜日、気になっていた「キング・アーサー」を観てきた。
ローマ軍のブリテン島からの撤退、それに伴う要人家族の救出、兵役義務からの解放と命を賭けなくてはならなくなった辣腕の外国人騎兵隊、と、起こる事件を追い掛ければ、展開はまるで「スパイ大作戦」(ミッション・インポッシブルの古いヤツ)である。
ローマの撤退にサクソン人はもちろんつけこんでくるし、「壁」の北側の荘園から戻ってきてもピンチは続く。めいっぱい引っ張ったところでドンデンとひっくり返しがあり、戦友の情にほろりと来る盛り上がりもありで、「グラディエイター」ばりの古代肉弾戦戦争アクション映画としてなかなか楽しめる。脚本は同じ人ですね。
しかしいわゆるアーサー王伝説は中世騎士物語であるからして、こんなのは違うと思い続けたままエンドロールを迎えた人も多いだろう。
伝説の源流をさかのぼれるだけ遡った時点の、起こったかもしれない事件。それを理想化抜きで描き出すのがこの映画のコンセプトである。いやまあ、ローズマリ・サトクリフ『ともしびをかかげて』を読んでたりすれば、甲冑のローマ風なのと、現地の人がピクト族なあたりで、ああこれかと思えるわけで。
ただまあ、騎士物語と全然違うというものでもないなあ、とワタクシは思うのである。
この映画の主人公、アルトゥリウスはとにかくよく喋る。ありうべきローマ、ありうべきキリスト教、戦友をかけがえなく思うがゆえの祈りまで言葉に出してしまう。祈りを当の戦友に聞かれちゃうのだ。ああ恥ずかしい。
いやアメリカ映画にはありがちだし、この説明のおかげでストーリーのもうひとつの柱であるところの、主人公の苦悩と、ふっきれるまでの経過が観念的にしろよくわかるのだ。

キリスト教徒としての自分の理想をも、主人公はことあるごとに口にする。
自由と、平等だ。
聖職者の手紙からブリテン列王史、12世紀南フランスのトルバドゥールが唄った騎士の物語、体系化と「騎士道」的理想化の果ての「アーサー王の死」と、思えば人々はアーサー王の戦いに自分の時代の理想を反映させてきたのだ。
理不尽な支配からの騎兵たちの自由、ペラギウス異端の内的な倫理にもとづく自由と平等の形を借りて、現代の理想が、この映画にも託されているように思われる。
もちろん主人公の考える理想は彼のどたまの中にしかない。かれがもはやローマにもありえないと分かって追いつめられ、自分は死んでも理想を実現したいと自棄っぱちで戦いに立ったことが、現地の人々の利害と一致したのは全くの偶然のはずである(笑)。マーリンの予言やら伏線はあるのだが、この希有な偶然を感動できるストーリーに仕立て上げたのは天晴れな力業というべきか。さすがである。
紀元3世紀から7世紀はブリテン島に関する文字史料のない時代で、いつ誰がどこで何をやっていたのか、具体的なことはさっぱりわからないのだという。遺跡や遺物のような文字でない資料から当時の人たちの暮らしぶりなんかは再現できるはずなので。そのへんの考証がこの映画のリアル感を支えているのでしょう。サルマート人説の支えなのか、騎兵隊の戦装束が大陸風にかっこよくしてあるのもまたよきかな。

ちなみにファンタジー読み神話伝説スキーのワタクシがグッときたのは。
戦で死んだ英雄たちの魂は、名馬になって戻ってくる。という台詞が導入部にあったのだ。
最後の最後、馬たちが走っていくラストシーンにつながっているのだが、その前にも、引き上げの長い列にもサクソンの進軍の太鼓が聞こえてくるシーンがあるのである。
騎手たちにとっては、予期していたものがとうとうやってきたか、という兆なのだが。
馬たちは戦の予感に騒ぎ、落ち着かなくなる。
いにしえの英雄たちが、騎手たちに、真に戦うべき時を教えているようにも見えるのだ。
いや、深読みのしすぎとは分かっちゃいるんだけどね。

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Comments

書き忘れセルフコメント。
もちろんここで言っているのは啓蒙主義とフランス革命以降の自由平等博愛と同じ概念であるはずはなく、部下の騎兵隊の面々にしてみれば、縁もゆかりもない人々のため命がけで戦わなくてはならない兵役からの自由のはずなのだが。主人公の思考のうちの理想はちょっと違うらしい。
かれ自身は騎兵隊の面々と同族なのか、ローマ軍人で属州の女性と結婚し任地に骨を埋めたのか、たぶん後者だと思うのだが、ローマに行ったことがあり、ペラギウスの弟子と説明されている。歴史好きの友人がここで盛り上がっていたのは覚えているのだが、調べてみてやっとわかった。ペラギウスというひとは神への帰依と教会への従属よりは、苦行によって内的な倫理の確立に至る道を指向し、アウグスティヌスと対立したがゆえに異端とされたのである。ちなみに劇中でもその処刑について言及がある。

Posted by: しのぶ | 2004.08.26 at 05:22 PM

あっ、コメントは訂正できないのか(汗

× 任地に骨を埋めたのか

○ 任地に骨を埋めた父の息子なのか

ということで。

Posted by: しのぶ | 2004.08.26 at 05:31 PM

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Tracked on 2005.01.22 at 12:20 PM

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