『家守綺譚』
『家守綺譚』 1400円(税抜)
梨木 香歩 四六判/新潮社
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というわけで『家守綺譚』である。気になってはいたのだが、正月に風邪で倒れてた間(脱水症状で点滴しましたよ(汗)休んでた新刊チェックから抜けていて。
ふとリアル書店で購入。おおもう三刷だ。
時代的には明治後半なのだろうが、よくわからない。まあ、だいたいのところが分かっていればそれでよい種類の話である。
主人公綿貫征四郎は文士である。とはいえほんの駆け出しで、とても文士では喰っていけず、大学出を活かして英語学校の臨時教師をたつきのすべとしている。しかしなかなかに不本意な日々を送るところに、家守の話がやってくる。
もちろん爬虫類のアレではない、早世した学友の父親が、田舎のひとり住まいを引き払うのだが、残す空き家に住まい日々風など通してくれれば、些少だがそのしろなりとお渡しするので空き家の守りに来てくれまいか、というのである。
渡りに舟というやつで、かくて、暢気といえば至極暢気な家守生活が始まるわけだが。この主人公の特徴はなんというか虚心であることだろう。それだけに、庭のサルスベリに懸想され、散歩すれば犬に見込まれ、掛け軸の沼から亡きはずの友は訪れるわ、果ては散る桜に別れを惜しまれるわの、まさに綺譚の日々が、しっくりとおさまりよく続くのだと思う。
幕切れの短編の、寂としてなお美しい常世の風景を文筆の糧となすのは見方によってはいじましいのだろうが。わたしはとても気に入った。
またどこかで、この家守の話を書いてくれないだろうか。
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