『夏のロケット』川端裕人 文春文庫 3/3
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本作『夏のロケット』は、過激派のアジトから発見されたロケット弾の報道から始まる。そう、いまさらここに書くまでもない、兵器開発と切り離すことはできないのだ、ロケット工学の歴史は。
そして、この種のあやうさばかりではなく。たとえば設定や展開の細部などには、見るからに「?」と理性が立ち止まる部分がある。現実的説得力を求める向きは、本作は穴だらけに見えるかもしれない。
少年の日の夢を実現させるため、作劇のうえであえて無視したと見る解釈も有りだろう。この主題なら許すという人もいるに違いない。実際、それだけの説得力はこの物語には備わっている。
しかし、それは話が逆だと思うのだ。
なんのヒモ付きでもないロケットを宇宙に飛ばす、それをロケット開発の黎明期でなく現代の日本で実現させるのは、これだけあやうく、あやしいことなのだと、はっきり提示されているように私には思える。
そんなあやういことでなく、実用的かつ現実的な宇宙開発が行われていてほしい。詩情に乗せられてしまう稚気ゆえのガムシャラさなんかなくても、火星にロケットが飛んでほしい。
太陽面フレアで日本の衛星が二つもダメになったというニュースを聞いたりすると、素人ながら切に願わずにはいられないのであった。
大団円的結末特に女性記者の行く末が引っかかるものの、まあ、続きは読んでみようかと思う。
(20031106)
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