『夏のロケット』川端裕人 文春文庫 2/3
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本作のキモ、核心となるのはロケットである。とにかく飛ぶまでやりとおす、その一念である。
なんとしてもロケットを飛ばして宇宙に行く、行く先は火星である。なぜ火星なのかは作中で語られているし、大いなる共感をもってワタクシなどは読み進んだのだが。
なにか目的があって、そこに到達する手段として新技術を開発する、それがまあ常識的な発想だろうが。目的なく、したいからする、という衝動が理工系特に技術系の人にはあるようなのだ。
火星に行きたいから有人宇宙船実用化の端緒として宇宙ロケットを開発するんでなく、宇宙ロケットを作って打ち上げたいから作るのである。
こういう衝動を肯定的に見るのがSF好きの性向ではあるし、わたしはとても好きなのだが。
現実的には非常にあやうい部分を孕んでいる。ブラッドベリに代表される詩情は、そのあやうさを見えにくくしてしまう。
いやブラッドベリ自身は同種のあやうさをクールにとらえた短編も書いていたはずだ。
より正確を期すには、詩情があまりに強く印象に残るため、その感動を覚えている読者には見えにくくなってしまう、というべきだろう。
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