『ヤスケンの海』村松友視/幻冬舎
うぬ、『ヤスケンの海』を読んでいてこんな時間に。 Amazon
スーパー・エディターちゅう恥ずかしい名前を名乗っていいのはたぶんひとりだけ、ヤスケンこと安原顕氏の半生を、中央公論の文芸誌「海」時代の同僚にして盟友、村松友視が綴った書き下ろし366枚。
ヤスケンのひととなりを親しく知るがゆえに、「海」時代の苦闘、そして告知から最後の時までを中心に、想いはあふれてあまりある。
しかしわたしが思い出すのはマリクレールなのだ。新しい服など買いもしないのに、書評欄やら読書特集にひかれて、ハイ・ファッション中心の女性誌をずっと買っていた。SFといったら巽孝之だったし、筒井康隆の連載があった。『キッチン』でデビューしたての吉本ばなな(昔は漢字名字だった)に『TUGUMI』を書かせたひと、と言うともっと通りがいいか。
ヤスケンがメタローグを起こしてからもしばらく出版物は追い掛けていたが、ポストモダンや脱構造主義にはとうとうついていききれなかった、というワタクシ的昔話はさておき。
『ヤスケンの海』には幼少時代、成長期の家庭環境など、文学らしい掘り下げもあるが、欲を言えば、村松氏が退社したあとの時代、氏の直接は知らない時代の話も聞きたかった気はする。
しかしまあ、それはそれ、これはこれだ。1600円の本は私が買うには高い部類の本だが。買う人は買うでしょう。ヤスケンの仕事に惹かれた覚えのあるひとならば。
これはそういう本だ。
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