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2003.03.25

『キャラクター小説の作り方』大塚英志;講談社現代新書

購入→bk1
キャラクター小説、もしかするとライトノベルという名前もネットではなじみが出てきたかもしれないが、たしかに想定購買層は小説じゃない他媒体と重なるものはある。しかしそれは売る側の都合なんじゃないかと思うのだ。
じゃあ、読者にとってライトノベルとはなんなのか。
本書で大塚英志は、漫画やアニメ、ゲームで認知されている記号を使った装置、自然主義文学の伝統を受け継ぐ主流文学とは異なる新しい小説だと定義する。そして手塚漫画、テーブルトークRPG、さらには原作者そして作家として関わってきた実作業の過程から、ライトノベル世代の言語で、小説を書く準備作業が、技法として語られる。
著者も書いているが、たとえばエピソードをカードに書き出し、ストーリーの運びを分析する方法そのものは新しいものではない。そこに行くまでの、テーブルトークRPGを「遊ぶ」方法論で作品を組み立てていく役割はデザイナー、ゲームマスター、プレイヤーと三種類あって、別々だけれど連携していないと面白くならない、という持っていきかたは、漫画家→編集者→原作者・小説家と経てきた著者には自家薬籠中というべきか、読み物としても面白い。そこまで親切にしていいの、と心配になるくらいに。
実際にはライトノベルに限らず、読まないけど書きたい人は増えている。おもしろさの立脚点に差がある読者としては、この本の書かれ方に全面的に賛同はしない。しかし少しは変わってほしい、とは思っているのであった。
むろん、テクストそのものが怠惰ではあるが装置だとか、記号と言い始めたら言語そのものだって、というツッコミはいくらもできるが、著者は先刻承知であろう。
最後まで読めば、主流文学の根幹をなす自然主義の「自然」、私小説の「私」もパラダイムの一種だと、言及があるのだ。
特筆すべきはむしろ、記号的な要素に立脚するフィクションの可能性を信じたいと、1章を割いてはっきり書かれていることだろうか。自分自身に何が残せるかという問いかけを含んでいると思われてならない。

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